Ⅰ. あいさつ
皆様いかがお過ごしでしょうか。昨年からの1年間は、時間的にはいつも通りの1年間ですが、変則的な事態が次々あり、私自身は隔世の間があるという言葉を使いたくなるほどの長さに感じております。皆様ご自身、あるいはご家族は、無事1年間をお過ごしになられましたでしょうか。
臨床心理の世界にとっても、相談の形態や、内容の変化などコロナ禍の影響が多々あったかと思います。オンライン相談の実践をされている方もあると思います。私も、学会だけではなく、治療、SV、研修とオンラインを経験し、制限と共に可能性も感じているところです。何より、遠方の方とのそれらの実践が可能になったことは、今後にも大きな影響を与えるものと思います。平常が戻ってきたとしても、この間に経験した実践形態の一部は残っていくでしょう。
それにしても、常にコロナのことが気になり、話題にも登場するのがこの1年間の特殊な状況だったとも言えます。これだけ同じことを気にし続け、語り続けてきた期間もないのではないでしょうか。よく言われることですが、この事態は平時ではなく非常時であり、言ってみれば戦時と同じような感覚かもしれません。それ以外の関心も活動も狭まり、閉塞感が漂っています。今私は、コロナのことばかり書くのをやめようと思ってこの段落を始めたのですが、またコロナのことになってしまったのに驚いています。
あらためてご挨拶から始めますと、皆様、コロナ以外では、どのようなご経験をこの1年間にされましたでしょうか。困難な状況でも、新しい試み、新しい活動に注目することが大切でしょう。私の中では、今までなかった読書経験があり、今ままでなかった学会活動の経験もありました。生活領域を拡張することはできませんが、活動の主題についてはこの1年で広がった部分があることを今振り返っております。
今年の甲南学会が、皆様の新しい展開を持ち寄り、共有する機会になることを念じております。
会長 森 茂起
Ⅱ. 第23回大会 「コロナ禍の中の心理臨床」案内
2020年初頭、世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい、日本では2020年4月7日、大都市圏に1回目の緊急事態宣言が出され、同月16日には対象が全国に拡大されました。学校は休校となり、公民館や図書館などの公共施設や商業施設、レジャー施設などが休業、閉鎖に追い込まれました。同時に、心理臨床の現場も穏やかではいられませんでした。危機的状況において強く求められるはずの心理臨床行為をこれまで通り行うことが難しくなり、それぞれの現場で密集、密接、密閉の三密を避けたり、マスク・手指消毒の徹底、面接のオンライン化など、独自の工夫により来談者の支援を続けようと努力がなされたはずです。
甲南心理臨床学会もまた、新型コロナウイルス感染症の影響を免れ得ず、ギリギリまでの調整の結果、2020年度の大会及び活動は停止とし、年会費の徴収もしませんでした。2021年に入ってからも状況は予断を許さず、1月には2度目の、さらには4月には3度目の緊急事態宣言が発出され、先行き不透明な状況です。
このような中、2021年度の甲南心理臨床学会は「コロナ禍の中の心理臨床」とのタイトルの下、甲南心理臨床学会の会員はどのようにこの未曾有の状況を生きているのかについて報告および情報共有を行いたいと考えます。まずは、卒業生の中から声をかけさせていただいたシンポジストにお話しいただき、情報を共有すると同時に、今後新型コロナウイルス感染症の世界でどのように心理臨床行為を展開させてゆくのかともに考える機会としたいと思います。そして、従来とは環境が異なる中ではありますが、甲南の心理臨床の原点ともいえる事例検討会を行います。
シンポジウムでは、生々しい現場の声を聞くことができるでしょう。
事例検討会で出される事例についてCOVID-19の影響の有無は問いませんが、オンライン形式ということで従来とは違った体験をすることとなるでしょう。心理臨床の現場、研修の場、いずれも従来と異なるやり方であっても心理臨床行為が成立するのであれば、その底に流れる大切なことや譲れない一線とは何なのか。さまざまな議論が可能であると思われます。幅広く会員の臨床実践の記録を募集します。
今年度の甲南心理臨床学会第23回大会は、学会初の試みとしてZoomによるオンライン形式での開催を予定しています。以下の案内をお読みになった上で、申し込み、参加をお願いいたします。会員のみなさまのご参加を心からお待ちしております。尚、本大会も従来通り、日本臨床心理士資格認定協会のポイントを申請予定です。
●○
プログラム ○● 日 程:2021年7月18日(日) 会場:Web開催
10:00~12:30 シンポジウム「コロナ禍の中の心理臨床
~そのとき甲南卒業生はどうしたか~」 (2時間半)
12:30~13:00 総 会 (30分)
13:00~14:00 休 憩
14:00~17:00 事例検討会 (3時間) ※事例発表者募集中
※1研修証明書は後日郵送します。
※2参加申し込みの最終締切は 7月5日(月) です。事務作業の都合上、早めの申し込みをお願いいたします。
Ⅲ. シンポジウムおよび事例検討会ご案内
シンポジウム コロナ禍の中の心理臨床 ~そのとき甲南卒業生はどうしたか~
シンポジスト : 荻野 基介 先生 (甲南大学心理臨床カウンセリングルーム・垂水病院)
2020年度は甲南大学心理臨床カウンセリングルームにとって元々大きな転換点であり、実は今現在もその過程にある。というのは、甲南大学は心理臨床家養成のプログラムを臨床心理士第一種指定校から転換し、公認心理師養成センターによるカリキュラムに舵を切っていく渦中であり、その中でカウンセリングルームの位置付けは議論が行われる予定であった。その中での、このコロナ禍である。当ルームはルーム長を中心にスタッフ内で議論し、一つの対応策として遠隔面接(zoom面接・電話面接)の導入を決定した。今回のシンポジウムでは遠隔面接を決定した経緯と臨床的な手応えについて報告したい。
シンポジスト : 岡田 審 先生 (弘済のぞみ園)
全国の児童福祉施設では、被虐待体験や発達障がいを抱える子どもが大勢生活しています。演者の勤務する『児童心理治療施設・弘済のぞみ園』でも、感情や衝動コントロールに課題を抱え、医療や療育の手厚い対応が必要な子どもにケアを行っています。昨今のコロナ禍における現場の実情を紹介しながら、子ども達への心理的援助について報告させていただきます。
シンポジスト : 丹野 安芸子 先生 (山形大学保健管理センター・学生相談室)
昨春、勤務先の大学では、卒業式や入学式の中止、キャンパス閉鎖、オンライン授業…と、学生も教職員も不安と戸惑いを抱える中で新年度が始まりました。学生相談室も約1ヶ月の閉室期間を経て,電話やメール,Zoomを用いた相談から再開し,従来とは異なる形での業務において多くの課題や困難がありました。しかし同時に、これまで当たり前に過ごしていた日常の有り難さ、大切にすべきものの存在に改めて目を向け、考えさせられる日々でもあったように感じています。
シンポジスト : 徳岡 香織 先生 (㈱竹中工務店大阪本店カウンセリングルーム)
新型コロナ感染拡大に伴い、昨年3月頃から企業はテレワークの促進が求められ、働き方が大きく変わりました。昨春の緊急事態宣言中は私たち社内カウンセラーも在宅勤務を要請されました。それ以降も現在に至るまで、対面・オンライン・電話相談を組み合わせたカウンセリングが続いています。セラピストとクライエント、双方のあいだ、そして組織内、それぞれにおいて「変わったこと」「変わらなかったこと」をこの機会に整理してみたいと思います。
指 定 討 論 : 香月 菜々子 先生 (大妻女子大学)
心理臨床はその本質として“対面による対話”を前提としている。しかしコロナ禍での感染症対策がもたらしたものは、人と人とを物理的に隔て、人が人の傍に居ることを難しくする事態だった。心理臨床の在り方を根底から覆すような事態に、臨床家はそれぞれ「今できることは何か」を考え、実践し、日々の現場を支えてきた。国内各地域の感染状況は異なっていたためその様相は一様ではないだろう。筆者は関東にて臨床と教育を担う立場からの報告と、現場のニーズに基づき編み出した「交換日記/絵日記」面接をご紹介し、これからの臨床を考える一助としたい。
司 会 : 新道 賢一 (関西医科大学精神神経科学教室・甲南心理臨床学会世話人会代表)
事例検討会
Ⅳ. 参加申し込み
同封の払込用紙で必要金額を払込むとともに、世話人の荻野宛(mtskogn@gmail.com)に、大会当日のZoom入室先アドレスの連絡を受信可能なメールアドレスを、件名に「第23回大会参加希望」と記入したメールでお知らせ下さい。
入金およびメールアドレスの確認をもって参加予約とさせていただきます。 なお、払込につきましては締め切りを7月5日(月) としておりますが、円滑な大会運営のため、できるだけ早めのご入金をお願い申し上げます。本大会は、毎年、(財)日本臨床心理士資格認定協会より、臨床心理士教育・研修規定別項第2条第4号に規定する教育研修機会として承認されており、本大会に参加された方は、受講者として2ポイントを取得できます。
会費: 大会参加費 : 1000円
年会費 : 3000円
Ⅴ. 紀要論文・研究ノート・エッセイ募集 ~『甲南心理臨床学会紀要 第23号』原稿募集~
『甲南心理臨床学会紀要』は、会員のみなさまのメディアです。みなさまからの投稿をお待ちしております。投稿の内容は、基本的に各種の学会誌に準じますが、多少融通を利かせる余地はあります。以下を目安にして下さい。
・研究論文 16000字以内(コメント付の研究論文についても相談に応じます)
・研究ノート 8000字以内
・エッセイ 2000~4000字程度(エッセイには、職場案内や各種事業の活動報告なども含みます)
締切は、2021年10月末です。
投稿の内容などにつきましては、相談に応じますので、まずは学会事務局までお問い合わせをお願いします。
投稿・お問い合わせ先:学会事務局まで郵送/FAXもしくはoffice@kacp.info(担当:新道)まで。
山口直彦先生追悼文募集 2019年8月30日にご逝去されました山口直彦先生の追悼特集を作成します。山口先生との思い出を是非とも寄せていただきますようお願いいたします。 |
Ⅵ. 世話人会・事務局からのお知らせ
(1)
学会運営について
2009年度より、この学会の運営方法が変化しております。会員の皆様には、ご不便をおかけしたこともあるかと思います。今後も、いろいろとご協力をお願いすることがあるかと思いますが、何卒、ご理解の程、よろしくお願いいたします。また、学会運営や大会、分科会について、ぜひご意見ください。
(2)
年会費未納の方に
この学会の運営は、会員及び大学院生の年会費で成り立っております。そのため、3年間会費を滞納されますと、退会になるという会則が設けられております。年会費を滞納されている会員の方で、今後も会員の継続を希望される場合は、至急ご入金くださいますようお願い申し上げます。大会当日を過ぎて未納の方は、会則第3章第8条(年度会費を3年連続で滞納した会員は、3年目の総会をもって退会とみなす)に基づき、退会の手続きをとらせていただきますので、悪しからずご了承ください。
(3)
学会ウェブサイトについて
大会情報等の告知のため、ウェブサイトを開設しております。
(4) 学会事務局への連絡について
〒658-8501 兵庫県神戸市東灘区岡本8-9-1
甲南大学10号館 文学部人間科学科図書室 甲南心理臨床学会 事務局 E-mail
> office@kacp.info Web-site
> http://www.kacp.info |