2019年5月15日水曜日

甲南心理臨床学会第22回大会


. あいさつ
 
 甲南大学臨床心理学会会員の皆様。いかがお過ごしでしょうか。この場を借りまして、最近の甲南大学の臨床心理学の状況を報告したいと思います。
    既にご存知の通り、公認心理師のための学部カリキュラムが2018年度から始まり、1回生の1年間の教育が終わったところです。公認心理師カリキュラムを運営する公認心理士センターの所長である富樫公一先生を中心に、順調にカリキュラムの運営が進んでいます。そのカリキュラムで学んでいる1回生にとっても、経過措置で公認心理師を目指すことができる現在の2〜4回生にとっても、大学院への進学が目の前に迫る課題となってきます。2018年度卒業生の中にも、公認心理師を目指して無事他大学の大学院に進学した学生がありました。

昨年度中は、他大学の大学院への進学を支援する制度の整備が行われてきました。鳴門教育大学、兵庫教育大学との協定によって、推薦制度の整備が行われました。こうした制度を通し、また他大学受験生への支援によって、甲南大学出身の公認心理師が今後も生まれ続けるはずです。皆様の後輩が、新たな制度の中で公認心理師として働き始める時が迫っています。これからも、甲南大学出身の心理専門家として連携・交流が進むことを願っています。

また、2018年度に甲南大学大学院に進学した院生たちは、臨床心理士を目指して学修、実習を進めています。最終学年であることが影響しているのかどうかはわかりませんが、皆さん元気に、意欲的に勉学、実習、そして修士論文のための研究に取り組んでいます。

こうした資格関係の動きと並行して、人間科学専攻では、資格取得ではなく、心理学の研究が進められ、特に博士課程では、それぞれの院生が、優れた研究を進めています。皆様の中にも、修士を出てしばらく実践経験を積んだ上で、今一度、その成果をまとめたり、実践的研究に取り組みたいと考えている方があると思います。その場合は、甲南大学の博士課程での研究を考えてみてください。

まだこれからの数年で検討し、新たに築いていかねばならない課題がありますが、これからも連携をよろしくお願いします。

会長 森 茂起


. 22回大会 「サイコロジカルファーストエイドと事例検討会」案内
 
 昨年の甲南心理臨床学会は第1回公認心理師試験に向けて全力で準備するという趣の大会となりましたが、本年は公認心理師時代の到来にあたり時代の先端に目を向けつつ、毎回要望の多い事例検討会を行うことになりました。いわば、心理臨床の不易流行を探る試みです。

時代の先端として名前が挙がったのは、サイコロジカルファーストエイドでした。阪神淡路大震災から四半世紀が過ぎようとし、東日本大震災の復興も道半ばと言われる一方で、南海トラフ地震が30年以内に7080%の確率で生じるという報道もある中、災害や緊急支援における心理臨床家の役割の重要性も増しつつあります。また、第1回公認心理師試験でも2問が出題されたことからも、サイコロジカルファーストエイドの注目度が上がっていることもわかるでしょう。現在、人気が高く講習を受けるのが難しいとも聞くサイコロジカルファーストエイドについて、その第一人者であり、本学の修了生でもある明石加代先生から全体会でのご講演をしていただくこととなりました。国家試験対策の一環として、また心理臨床家としてのステップアップのため「常ニ備ヘヨ」(甲南大学創立者・平生釟三郎のことば)の精神でお聞きいただければと思います。

一方、分科会は講師の先生方に「従来の甲南心理臨床学会のあり方の原点に立ち返るような事例検討会を」とお願いしたところ、事例の発表とコメントというような通常の事例検討会とは異なる意欲的な企画が並ぶこととなりました。

会員のみなさまのご参加を心からお待ちしております。
 
 

●○ プログラム ○●  日 程:201977日(日)    会場:18号館

9:30~                            受付

10:0012:30                       分科会                  18号館各講義室

12:3013:00                       総  会  18号館講演室

13:0014:00                       休  憩

14:0017:00                       全体会                  18号館講演室

 

1昼食は各自でお済ませください。

2研修証明書はシンポジウム終了後、配布いたします。

3参加申し込みの締切は 67日(金) です。

 

. 分科会および全体会ご案内


分科会1 セラピストA、セラピストB、そしてクライエント
 
      : 羽下 大信 先生 (住吉心理オフィス)   

司 会    野原 一徳 先生 (名城大学学生相談室)

事例提供  : 小松 世依 先生 (香川県精神保健福祉センター)

内容紹介  : 今回の事例研究の、①進め方は、a)セッションのプロセスに沿って、その時にTh.が立つ位置、感じ取ったもの、応答を再現し、b)リアルTh.(発表者)と仮想Th.(この場合、羽下)の対話をする。②目指すところは、このプロセスをとおして、セッションの含みを味わいつつ、あり得たの他の面接の可能性も想像してみる。
 
分科会2 ’個としての子ども’と生きる
 
     : 穂苅 千恵 先生 (一般社団法人山王教育研究所)   
 
     : 前田 佳子 先生 (神戸女学院大学大学院心理相談室)
 
内容紹介: 甲南大学を離れてから、子どもの臨床を担当する機会が増えました。事例ごとに「プレイルームが空いていない状況で、どのように遊戯療法を実現しようか」「家庭の並行面接を設定せずに、どのように養育環境を看ていこうか」など考えながら、現場と心理療法が融和する形をさがしています。自験例を皆さんと検討し、協働やチームのメンバーでありつつ‘個としての子ども’と生きる臨床について考えてみたいと思います。



分科会3 現代の意識と心理療法-「非二」という視点から-
 
      : 橋本 尚子 先生 (京都先端科学大学)   

      : 長野 真奈 先生 (京都女子大学学生相談室)

内容紹介: 近年、クライエントが主体的に悩みを語り、セラピストがそれに共感しつつ照らし返すというオーソドックスなカウンセリングが通用しにくい事例が増えてきている。河合隼雄は、「二」という数字は、葛藤や影と結びつきやすいと述べているが、現代では、葛藤や影、傷などが、ないことにされてしまう人が増えてきている。従来のカウンセリングが通用する心的世界を「二」の意識、近年増加してきている葛藤のない意識を「非二」の意識ととらえ、「二」と「非二」の事例を紹介しつつ、両者の世界のあり方の違いをとらえたい。

 
全体会 サイコロジカル・ファーストエイドから学んだこと

       : 明石 加代 先生 (かささぎ心理相談室)   

      : 山口 修一朗 先生 (かささぎ心理相談室

内容紹介: サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)は、近年、災害や緊急支援のガイドラインなどでかならず言及されるようになりました。私はこの日本語訳に携わったことから、いろいろな場所で、PFAを紹介する機会をいただくようになりました。PFAがどういうものかということは、おそらく会員のみなさまには、説明不要かと思います。今回は、災害時の支援活動全体のなかで、PFAをどう位置づけることができるのか、あるいはトラウマ臨床のなかで、どう活かすことができるのか、私なりに学んできたこと、考えてきたことを聞いていただけたらと思っています。特にここ数年、犯罪被害者の支援に関わるなかで、PFAを自分のなかで再発見することが多いように感じています。


 . 参加申し込み

    同封の払い込み用紙に、お名前、ご住所等をご記入の上、必要金額を払い込んでください。 入金の確認をもって参加予約とさせていただきます。 なお、必要費用の払込みにつきましては事務の都合上、勝手ながら、67日(金)までに 完了していただきますようお願い申し上げます。学会運営の簡略化のため、何卒ご協力よろしくお願いいたします。本大会は、毎年、(財)日本臨床心理士資格認定協会より、臨床心理士教育・研修規定別項第2条第4号に規定する教育研修機会として承認されており、本年も申請を行うこととしております。本大会に参加された方は、受講者として2ポイントを取得できます。

会費: 
大会参加費: 5000円 ただし修士課程の大学院生は2000

年会費   : 3000円  ただし修士課程の大学院生は2000