学会案内

甲南心理臨床学会は、心理臨床に携わる専門家と心理臨床を専攻する甲南大学大学院生の交流と研鑽の場として1996年に発足されました(第1回大会 は、” 甲南心理臨床懇話会”との名称)。年に1度、甲南大学に集い大会と総会を開催する他、紀要の発刊や研究会・研修会を行っています。

2024年6月15日土曜日

甲南心理臨床学会第26回大会

 

. ごあいさつ

新緑の美しい季節になりました。会員のみなさま、いかがお過ごしでしょうか。このNews Letterでは初めて一文を書かせていただきます。

今年の3月は気温の低い日が続き、日差しは春なのに体感温度は真冬のような不思議な年度末でした。それでも、コロナ禍でのさまざまな活動制限が解かれて初めての春、卒業旅行や送別の会など、学生も教職員も45年ぶりに心置きなく実施することができました。あまりに久しぶりで、人と集うことに億劫さを感じたり、逆に期待が高まり過ぎてはめを外したりすることもあるでしょう。「人と会う」ことを生業とする私たちにとって、コロナ禍を経験した人とどんな関係性を結ぶのが最もセラピューティックなのか、思案しつつお仕事をされている方も多いかもしれません。

さて、昨年7月にこの任を預かってからあっという間の9か月ほどでしたが、昨年度の後期は、甲南大学に長く専任で在職する立場で何ができるかを考え、文学部、財務部、元カウンセリングセンター事務室から残務処理を一部移管したフロンティア推進機構事務室など、各部署の職員の方々のご協力を得て、本会の設立や、毎年度本学会紀要の出版助成を受けている経緯などについて、改めて確認し、共通認識を得ることができました。

 昨年3月末をもって、残念ながらカウンセリングセンターおよび心理臨床カウンセリングルームは閉じられましたが、本学で心理臨床を学び、巣立っていった卒業生・修了生のみなさまが社会において重要な使命を果たされていることに対して、甲南大学の関係者、とりわけ文学部の職員の方々は今も敬意と期待を抱いてくださっています。私たちは、それぞれ自身の研鑽を積むだけでなく、震災後の本学での実践や研究から得た貴重な臨床の知を、体系化し、同じ志をもつ後継の人々に伝えていく役割を担っていると言えるのではないでしょうか。公認心理師養成センターで学び、巣立っていく方々はきっとその中心となってくださることと思います。

 今年の第26回大会・総会は、より多くのみなさんに甲南大学のキャンパスにお越しいただき、旧交を温め、明日への元気を分け合う機会にできたらと願っております。また、遠方の方には、オンラインでのご参加も可能です。本会の活動への積極的なご参加とご協力を、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

                                                                     会長 高石恭子

 

. 26回大会 宮澤賢治の心理学を考える案内

宮澤賢治は、一般に「詩集」として愛されている『春と修羅』を「心象スケッチ」と呼び、友人への手紙にそれは「或る心理学的な仕事」のための準備に過ぎないと書いている。ここで賢治は「心理学的」という言葉をどのような意味で使ったのだろうか。農学、化学、生物学、地質学、天文学をはじめ、あらゆる自然科学に親しみ、それらに由来する、通常文学には登場しない語彙を駆使して作品(特に詩の形態をとった作品)を生み出していった賢治は、心理学書にも親しんでいたと考えられている。しかし、元良勇次郎が現在の東京大学で精神物理学を講じ始めてからすでに約35年が経っていた実証的、科学的心理学を彼が構想したわけではない。「心象」という「現象」の不思議に魅了されながら、眼前に展開するその現象に科学者としての目を向け、わかろうとし続けることが賢治の心理学であった。そして、賢治にとっての最大の謎は、自らの内に、眼前に展開する心象と同様のものを経験しているであろう他者の存在であり、その他者の存在が失われるという受け入れがたい現実であった。その作品世界に触れながら、賢治の仕事について考える機会としたい。

講  師 : 森 茂起 先生 (甲南大学名誉教授)

司  会 : 南野 美穂 先生 (京都府・兵庫県スクールカウンセラー)

 

●○ プログラム ○● 日 程:2024728日(日) ハイブリッド開催 (5号館1511教室、Zoom)

9:30~10:00                  受  付 (Zoom入室開始)

10:0012:30                   講演会「宮澤賢治の心理学を考える」(2時間半)                         

12:3013:00                   総  会 (30)

13:0014:00                   休  憩

14:0017:00                   事例検討会 (3時間) 

 

1研修証明書はZoom参加の方は後日メールにて添付ファイルで送付します。

2参加申し込みの最終締切は 75日(金) です。事務作業の都合上、早めの申し込みをお願いいたします。

 

. 事例検討会ご案内

高石恭子先生をコメンテーターにお迎えして事例検討会をおこないます。

学生相談をはじめ、あらゆる分野における事例を募集します。事例発表をご希望の方は5月中に事務局( office@kacp.info )までお知らせください。

なお応募がない場合は、世話人会より会員の方にお声を掛けさせていただくことがありますので、予めご承知おきお願いいたします。

 

コ メ ン ト                        高石 恭子 先生 (甲南大学教授・甲南心理臨床学会会長)

司    会                          的場 充憲 先生 (池田市役所)

 

. 会費の払い込み、および参加申し込み

オンライン決済の普及に伴い、昨年度から郵便振替用紙を同封しておりません。つきましては、次の方法で会費、および大会参加費の払い込みをお願いいたします。

 

(ご入金方法)

(1) 郵便振替(窓口にて、青い払込み用紙でのお振込み)

 口座番号 00960-9-312606

 加入者名 甲南心理臨床学会

(2) ゆうちょ銀行の口座をお持ちの場合、ゆうちょのATM、またはゆうちょダイレクトでのお振込みが 

  可能です。

 振込み先の口座番号は(1)と同じです。

(3) 他金融機関からのお振込みも可能です。

  その場合の口座番号は下記の通りです。

 ゆうちょ銀行 〇九九(ゼロキュウキュウ)店(099

 当座 0312606

 

大会に参加される方につきましては、甲南心理臨床学会事務局office@kacp.infoに、本文に

 

①お名前

②ご所属

③臨床心理士登録番号(臨床心理士有資格者のみ)

④希望参加形態 (対面、オンライン)

⑤オンライン参加希望の方は大会当日のZoom入室アドレスの連絡を受信可能なメールアドレス

 

を記載し、件名に「第26回大会参加希望」を記入したメールでお知らせ下さい。メールおよび入金の確認をもって参加予約とさせていただきます。

なお、必要費用の払込みにつきましては事務の都合上、勝手ながら、75日(金)までに 完了していただきますようお願い申し上げます。

本大会は、毎年、(財)日本臨床心理士資格認定協会より、臨床心理士教育・研修規定別項第2条第4号に規定する教育研修機会として承認されており、本年も申請を行うこととしております。本大会に参加された方は、受講者として対面は2ポイント、オンライン参加は1ポイントを取得できます。

会費:      大会参加費        2000

年会費                                         3000

. 紀要論文・研究ノート・エッセイ募集 ~『甲南心理臨床学会紀要 第25号』原稿募集

 『甲南心理臨床学会紀要』は、会員のみなさまのメディアです。みなさまからの投稿をお待ちしております。投稿の内容は、基本的に各種の学会誌に準じますが、多少融通を利かせる余地はあります。以下を目安にして下さい。

・研究論文 16000字以内(コメント付の研究論文についても相談に応じます)

・研究ノート 8000字以内

・エッセイ 20004000字程度(エッセイには、職場案内や各種事業の活動報告なども含みます)

締切は、202410月末です。

投稿の内容などにつきましては、相談に応じますので、まずは学会事務局までお問い合わせをお願いします。

投稿・お問い合わせ先:学会事務局まで郵送もしくはoffice@kacp.info(担当:新道)まで。 

 

. 世話人会・事務局からのお知らせ

(1) 学会運営について

 2009年度より、この学会の運営方法が変化しております。会員の皆様には、ご不便をおかけしたこともあるかと思います。今後も、いろいろとご協力をお願いすることがあるかと思いますが、何卒、ご理解の程、よろしくお願いいたします。また、学会運営や大会、分科会について、ぜひご意見ください。

(2) 年会費未納の方に

 この学会の運営は、会員の年会費で成り立っております。そのため、3年間会費を滞納されますと、退会になるという会則が設けられております。年会費を滞納されている会員の方で、今後も会員の継続を希望される場合は、至急ご入金くださいますようお願い申し上げます。大会当日を過ぎて未納の方は、会則第3章第8条(年度会費を3年連続で滞納した会員は、3年目の総会をもって退会とみなす)に基づき、退会の手続きをとらせていただきますので、悪しからずご了承ください。

(3) 学会事務局への連絡について

 20174月から、学会事務局の住所は、甲南大学10号館にある人間科学科共同図書室になっています。こちらは郵便物を受け取るためのポストがあるのみで、事情のわかるスタッフは常駐していません。学会への連絡、問い合わせはメール office@kacp.info か郵便でお願いいたします。

2023年5月12日金曜日

甲南心理臨床学会第25回大会


1.第25回大会 「中井久夫と山口直彦の邂逅とその始末」案内

 甲南大学で臨床心理の教授をあいついで務められた、ともに精神科医の中井久夫先生と山口先生。そのおふたりの出会いは1980年、神戸大学医学部精神神経科の新任教授と、新任教授を迎えた医局長としてであった。背景もお人柄もかなり異なる(が妙な共通点もある)両先生が追突したことによって、図らずも豊穣なシナジーが生じた。この僥倖な果実について、演者の現認した出来事にもとづいて述べる。時間があれば、両先生の学問的業績について触れるかもしれない。

講  師 : 岩井 圭司 先生 (大阪人間科学大学人間科学部医療福祉学科)

司  会 : 岡田 尚子 先生 (神戸学院大学学生相談室)

●○ プログラム ○●  日 程:2023年7月2日(日) ハイブリッド開催 (18号館3階講演室、Zoom)

10:00~12:30 講演会「中井久夫と山口直彦の邂逅とその始末」および修了生によるリレートーク (2時間半)

12:30~13:00 総  会 (30分)

13:00~14:00 休  憩

14:00~17:00 事例検討会 (3時間)  

※1研修証明書はZoom参加の方は後日メールにて添付ファイルで送付します。

※2参加申し込みの最終締切は 6月16日(金) です。事務作業の都合上、早めの申し込みをお願いいたします。

2. 事例検討会ご案内

事 例 発 表 新美 秀和 先生 (大谷大学学生相談室)

コ メ ン ト 岩井 圭司 先生 (大阪人間科学大学人間科学部医療福祉学科)

司    会 前田 佳子 先生 (神戸女学院大学大学院心理相談室)

3. 会費の払い込み、および参加申し込み

オンライン決済の普及に伴い、今年度から郵便振替用紙を同封しておりません。つきましては、次の方法で会費および大会に参加される方につきましては大会参加費の払い込みをお願いいたします。

(ご入金方法)

 (1) 郵便振替(窓口にて、青い払込み用紙でのお振込み)  口座番号 00960-9-312606  加入者名 甲南心理臨床学会

 (2) ゆうちょ銀行の口座をお持ちの場合、ゆうちょのATM、またはゆうちょダイレクトでのお振込みが可能です。  振込み先の口座番号は(1)と同じです。

 (3) 他金融機関からのお振込みも可能です。  その場合の口座番号は下記の通りです。  ゆうちょ銀行 〇九九(ゼロキュウキュウ)店(099)  当座 0312606

 大会に参加される方につきましては、甲南心理臨床学会事務局office@kacp.infoに、本文に

①お名前

②ご所属

③臨床心理士登録番号(臨床心理士有資格者のみ)

④希望参加形態 (対面、オンライン)

⑤オンライン参加希望の方は大会当日のZoom入室先アドレスの連絡を受信可能なメールアドレス

を記載し、件名に「第25回大会参加希望」と記入したメールでお知らせ下さい。

入金の確認をもって参加予約とさせていただきます。 

 なお、必要費用の払込みにつきましては事務の都合上、勝手ながら、6月16日(金)までに 完了していただきますようお願い申し上げます。

 本大会は、毎年、(財)日本臨床心理士資格認定協会より、臨床心理士教育・研修規定別項第2条第4号に規定する教育研修機会として承認されており、本年も申請を行うこととしております。本大会に参加された方は、受講者として対面は2ポイント、オンライン参加は1ポイントを取得できます。 

会費:

大会参加費 : 2000円

年会費 : 3000円

2023年2月1日水曜日

甲南心理臨床学会第24回大会

 I. あいさつ

 学会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか。各現場でも新型コロナウィルス対応でご苦労なさっているのではと推察します。第6波では子どもに関わる現場で特にご苦労があったのではと思います。甲南大学は、ウィズコロナと言っていいのでしょうか、桜も美しい比較的日常に近い年度初めとなっています。私にとって退職前の最後の年度を迎えて気持ちを引き締めています、と言いたいところですが、ここ 2 年コロナに振り回されてきましたので、忙しさと共に日常感を楽しんでいる感覚です。退職後の来年度までゼミを担当することになっていますので、なおさらそう感じるのかもしれません。

 私が着任した頃は、まだ臨床心理士制度もなく、少人数の大学院生と心理学研究室(当時三つの小部屋からなっていました)を使って細々と臨床実践を行なっていました。しかし、臨床心理学を中心とする大学が少ない時代にあって、臨床心理学の人気を背景に急速に受験生、合格者の数が増加し、皆様がご存知の大所帯となっていきました。その辺りの経緯は、カウンセリングルーム紀要の最終号に書きましたのでご覧いただければありがたいです。ご自身が在学した頃をその経過に重ねて振り返っていただけると思います。新 18 号館が完成するまでの過程、あるいは完成後の引っ越しなどでは、当時在学されていた大学院生の方々に大活躍していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

 ルーム紀要の文章は 18 号館が完成して新しい体制になった頃で終わっていますが、大活躍といえば、18 号館に移ってからのそれぞれの時代も同様です。臨床心理士課程もそれぞれの時代の大学院のあらゆる活動も、また院生の方々が参加された様々の研究会も、大学院生の存在あって成り立っていたものだと振り返って思います。私が現在再び所長を務めています人間科学研究所の活動も、甲南大学で開催した学会の運営も同様です。大学院生にご負担をかけたこともあると思います。それらすべてについて参加くださった方々に感謝したいと思います。

 私にはまだ 1 年の勤務が残っておりますし、甲南大学の心理学教育は今後も続いていきます。公認心理師養成センターという組織が設立されて、公認心理師養成も続いていきます。今年も、今後も甲南大学の心理学の活動を見守ってくださればありがたいです。

会長 森 茂起

II. 第 24 回大会 「風景構成法の現在」案内

 風景構成法は甲南心理臨床学会会員にとってはなじみの深い技法であると思います。考案者の中井久夫先生が、さらに初めて風景構成法のモノグラフを著した皆藤章先生もかつて甲南大学で教鞭をとられていたこと、また甲南大学学生相談室の高石恭子先生も『風景構成法 その後の発展』という本の中に「風景構成法における構成型の検討―自我発達との関連から」という論文を寄せておられたことから、先生方が風景構成法について語っておられる場面を目にしたことがある会員も少なくないのではないでしょうか。箱庭療法、投影法、描画法を実践されている先生が他にもおられたことで、心理臨床の訓練の過程でこれらの技法に触れる機会も多かったことと思います。そのためか、甲南大学卒業生・修了生の中にも風景構成法で論文を書いたり、学会発表をされた方も多数おられます。

 しかし、近年国家資格である公認心理師ができる前後あたりから、風景構成法をはじめとする描画法、ロールシャッハ・テストなどの投影法検査、さらに箱庭療法などは客観性やエビデンスに乏しいため、あまり顧みられることが少なくなっているようにも感じられます。たとえば『公認心理師技法ガイド』(下山晴彦ほか編、文光堂、2019 年)をみると、目次、索引に風景構成法の名はなく、本文に数行の解説がなされているのみです。

 それでも臨床の現場ではまだまだ風景構成法の有用性は高く、当初は統合失調症者の箱庭療法の適応を見るために作り出され、その後統合失調症者の治療・精神病理構造の解明をめざすことで用いられてきた技法でしたが、現在では多様な疾患・病態の者、幅広い臨床場面で用いられています。

 今回の大会では、著書『風景構成法のしくみ 心理臨床の実践知をことばにする』(創元社、2012 年)で、風景構成法の有効性についてさまざまな角度から検討した佐々木玲仁先生をお迎えして、風景構成法の現在とこれからの可能性について考えたいと思います。佐々木先生もまた、甲南大学学生相談室のカウンセラーとして一時期甲南大学に勤務されていたことがあります。

 シンポジウムでは、甲南心理臨床学会会員による風景構成法の臨床現場における実践を紹介し、風景構成法が現在どのように用いられているのか、その有用性と限界、使用に際しての留意点などについて検討したいと思います。

 事例検討会では、佐々木先生の共同研究者でもある鈴木純一先生に風景構成法を用いた事例についてご発表いただき、佐々木先生を交えて会員で広く検討したいと思います。

 風景構成法について検討することは、単に一技法についての考察にとどまらず、日常の臨床における心構えや取り組みの姿勢について多くの示唆を与えてくれるものと考えます。

 今年度の甲南心理臨床学会第 24 回大会は、昨年度第 23 回大会に引き続き Zoom によるオンライン形式での開催を予定しています。以下の案内をお読みになった上で、申し込み、参加をお願いいたします。会員のみなさまのご参加を心からお待ちしております。尚、本大会も従来通り、日本臨床心理士資格認定協会のポイントを申請予定です。

●○ プログラム ○● 日 程:2022 年 7 月 10 日(日) 会場:オンライン開催

10:00~12:30 シンポジウム「風景構成法の現在」 (2 時間半)

12:30~13:00 総 会 (30 分)

13:00~14:00 休 憩

14:00~17:00 事例検討会 (3 時間)

※1 研修証明書は後日メールに添付ファイルで送付します。

※2 参加申し込みの最終締切は 6月 10 日(金) です。事務作業の都合上、早めの申し込みをお願いいたします。

III. シンポジウムおよび事例検討会ご案内

シンポジウム 風景構成法の現在

シンポジスト : 新道 賢一 先生 (関西医科大学精神神経科学教室)

 発表者は、大学病院精神神経科の外来・病棟で心理検査の業務を担当しています。WAIS を中心にいくつかの人格検査、ときに神経心理学的検査も交えながら患者がどのような人であるのかを見立て、患者に心理検査結果を伝え、心理検査を依頼した医師に診断・治療のための資料を提供します。結果はデイケア、作業療法のスタッフ、さらにはリエゾン、コンサルテーションの場合は他科の医師やコメディカルスタッフとも共有されることもあります。

 風景構成法は、他の心理検査では見られない被検査者の特徴を示してくれることが多く、発表者の中では実施しないという判断も含めて、日常の臨床で欠かせない技法となっています。

 今回の発表では、発表者が実施した風景構成法の構成型を WAIS-IIIと併せて検討し、風景構成法は何をみているのかを再考するきっかけとしたい。

シンポジスト : 荻野 基介 先生 (甲南大学心理臨床カウンセリングルーム・垂水病院)

 私が勤務する復光会 垂水病院は昭和 36 年の設立当時から「中毒性精神疾患」(依存症)の専門医療を提供してきた歴史を持ちます。主な対象はアルコール依存・薬物依存ですが、ギャンブル依存・クレプトマニア(病的窃盗)などの受診例も散見されます。近年の依存症治療の主流は認知行動療法をベースとする心理教育・グループワークそして A A・断酒会に代表される自助グループの参加でしょう。治療・療養の中ではさまざまな自己表現は非常に重要ですが、どうしても言葉での言語表現に頼るところが大きいと思われます。このような認識から非言語での表現方法の一つとして、あるグループ療法の際に風景構成法を導入しました。まだまだ試行錯誤の取り組みですが、一風変わった実践例の一つとして報告させて頂きます。

指 定 討 論 : 佐々木 玲仁 先生 (九州大学大学院人間環境学研究院)

 われわれ心理臨床家や臨床心理学研究者は、風景構成法のことをどれくらいわかっているのでしょうか。どれくらいといってももちろん数量で表わせるものではないのですが、仮に風景構成法について言語化あるいは明示化可能なものの総量が仮定できるとしたら、われわれ人類はそのうちどのくらいを既に明らかにしていると言えるのでしょうか。

 総量がわからない以上単なる勘に過ぎないことなのですが、私は、だいたい 15%くらいなのではないかと思っています。そして残り 85%は手付かずで残っていて、さらにその先に、言語化できない、暗黙のうちにしか知ることができない領域が果てしなく広がっている。こう考えると、「風景構成法の現在」は「85%の『耕作可能な未耕作地』とその向こうの深い森を前にたたずんでいる人」ということになるでしょうか。この「人」について尋ねられたら、私なら「これから耕してもいいところがまだこんなに残っているなんて何てラッキーなのだ、しかもその先にあんなに深くて美しい森もあるぞ、あの中を散歩するのも楽しそうだ、と思ってわくわくしている人」と答えるのではないかと思います。シンポジウムでは発表者お二人の森の旅の記録をお聴きでき、フロアのみなさんとともに議論できることを楽しみしています。

司 会 : 三宅 理子 先生 (東海学園大学)

事例検討会

事 例 発 表 : 鈴木 純一 先生 (札幌刑務所)

私は、刑事施設で勤務する法務技官です。主な業務は、被収容者に対して行われる総合的なアセスメント業務である処遇調査ですが、被収容者と継続的に面接を行うことも時々あります。今回のケースでは、他職種(医師、刑務官、福祉士、心理士等)が連携して短期集中的に行われた治療プログラムの一環として、風景構成法を用いた受刑者との継続的な面接過程について示したいと思います。受刑者は当初、統合失調症疑いの診断を受け、陽性症状も活発な様子でしたが、今回のプログラムの経過に伴って比較的落ち着いた様子を見せるようになっていきました。風景構成法が、今回のケースの展開に与えた影響について、皆様と一緒に考えていけたらと思っています。

コ メ ン ト : 佐々木 玲仁 先生 (九州大学大学院人間環境学研究院)

司 会 : 南部 勝彦 先生 (心理相談室 風花(かざはな))


IV. 参加申し込み

 同封の払い込み用紙に、お名前、ご住所等をご記入の上、同封の払込用紙で必要金額を払込むとともに、甲南心理臨床学会事務局 office@kacp.info に、本文にお名前とご所属と大会当日の Zoom 入室先アドレスの連絡を受信可能なメールアドレスを、件名に「第24 回大会参加希望」と記入したメールでお知らせ下さい。入金の確認をもって参加予約とさせていただきます。 なお、必要費用の払込みにつきましては事務の都合上、勝手ながら、6 月 10 日(金)までに 完了していただきますようお願い申し上げます。学会運営の簡略化のため、何卒ご協力よろしくお願いいたします。本大会は、毎年、(財)日本臨床心理士資格認定協会より、臨床心理士教育・研修規定別項第2条第4号に規定する教育研修機会として承認されており、本年も申請を行うこととしております。本大会に参加された方は、受講者として 1 ポイントを取得できます。 (今年度からオンライン研修のポイントが改定されています)

会費: 大会参加費 : 1000 円

年会費 : 3000 円